第13章 マロンscene1
長野までは俺の車で行くことにした。
前日に買い出しをして、車中での飲み物とか、軽くつまむものなんかを買い込んで。
遠足の前日みたいで、ふたりで興奮してた。
俺は和也にちょっとしたプレゼントを用意していた。
あのツアーの時、ずっと傍にいてくれた感謝をまだ伝えてなかったから。
いつも使っている香水がブルガリだから、それに合わせてブルガリのキーリングを買っておいた。
ちょっと華奢だけど、似合うと思ったから。
宿は、本当に寂れたところにあって。
まるで昔話の中にあるような風情だった。
タイムスリップした気分。
和也もそれは一緒だったようで、宿の玄関にたった時、二人で顔を見合わせた。
「なんか…いいね」
「うん、すっげえいい」
俺がそういうと、和也はにっこり笑った。
かわいい、と思った。
旅先でテンションが上がっているせいにしておいた。
「わー!全部山だー!」
和也は部屋にはいると、窓からの眺めに釘付けになった。
長野の山奥なんだから、さっきから山しかみてないのに、はしゃいでる姿がかわいかった。
「ねえ、潤くん。こっちきてよ」
俺も隣に座らされる。