第13章 マロンscene1
時々、倒れこんだまま眠ってしまって。
そういう時は濡れタオルを頭に載せてくれて。
ある日、意識が朦朧としているなか、和也の手が濡れタオルに伸びてきたので、掴んだ。
なんでそんなことしたのか、わからない。
とにかくその手が愛おしかった。
ぎゅっと握りこむと、俺の胸にあてた。
感謝の気持ちを伝えたかった。
和也はそのまま、動かないでいてくれた。
俺は安心して眠りに落ちた。
その日から、微妙に俺たちの関係は変わった。
冬が終わって、春がきて、夏になるころ。
和也は俺の家に住んでいた。
もう自分の家に帰ることはなかった。
あの日から、二人で一緒に寝るようになった。
でも別に身体の関係はなく。
寝る間際まで、二人で色々喋ってから寝るから自然とそうなった。
たまに和也にキスをしたくなる時があった。
でも男である和也に、こんな感情を抱くのはいけないことだと思っていて。
俺の中では、なかった感情にしていた。
ある日、長野の奥地にある温泉がとてもいいと旬から聞いて、和也と行ってみようという話になった。
出不精の和也が珍しく乗り気になった。
思えば、ふたりきりで遠出をするのはそれが初めてだった。