第13章 マロンscene1
そうこうしてるうちに、和也が立ち上がった。
リーダーが袖を引っ張ってそれを止める。
何か言っているが、こちらまでは聞こえない。
必死に何かを和也にお願いしているように見える。
和也の背中は、しょうがないなぁって溜息をついたかと思うと、リーダーの前にまた座り込む。
すると。
リーダーの手を取った。
そして、手のひらに何か人差し指で書いている。
何度も何度も。
リーダーはそれをくすぐったがり、全然見てない。
和也はそれを怒りつつも、楽しそうに笑っている。
一向に二人の手が離れることはない。
リーダーの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
それをたしなめるような和也の声も聞こえてきた。
リーダーの右手を和也が押さえ込み、無理やり文字を書いている。
そのうち、リーダーが身を捩って笑い出したので、和也がリーダーのおでこに、自分の頭をグリグリと押し付け始めた。
いつものじゃれあい。
そうなんだけど。
あの手はなに?
嫉妬で目の前が赤くなりそうだった。
ぐっと手に力を入れる。
バカ…バカ和也…
ふと翔くんを見ると、やっぱりリーダーと和也を見ている。
でも俺と違って、泰然としていた。
その頬には、笑みさえ浮かべて。