第13章 マロンscene1
いつもなら、ここで離れていくんだが、今日は違った。
唇を塞がれた。
ぎゅっと押し付けられたそれは、いつも甘くて。
唇をチロっと舐めてやると、その甘い口は開いて、俺を更に奥へと誘う。
そこに舌を入れてやると、更に甘い舌が待っていて。
舌を絡ませているうちに、だんだん高ぶってきて。
唇を離すと、和也の髪を撫でてこういってやる。
「シャワーしてこいよ」
和也は、その黒目がちな瞳をまっすぐ俺に向けて、恥じらいながら頷く。
もう一回、俺の唇にぎゅっと自分のそれを押し付けると、バスルームに消えた。
俺はまた文庫本を読み耽る。
でも頭の中は、和也でいっぱいだ。
今日の和也は、いつもよりシュンとしている。
撮影が延期になったとかじゃないのはわかってる。
ここ数日、何か悩んでる。
それも、リーダーのことで。
正直、嫉妬する。
俺以外のやつのこと、いや、人類のことで、何悩んでるんだよ。
しかも教えてくれないし。
本当は妬心で焼けるように心臓が痛い。
だけど、和也がそのうちわかるっていうから、今のところは我慢してやってる。
今のところは、ね。