第12章 オセロscene1
「あたりめーだろ。雅紀に手錠かけて……」
潤が急に黙りこむ。
嫌な予感がした。
こいつさっき『人が苦痛に堪えてる顔』って言った。
『女の子が』とは言っていない。
なぜかピンポイントでそこだけ脳裏に蘇った。
本能が危険だとアラームを鳴らす。
逃げなきゃ!
その瞬間、手首を掴まれて壁に叩きつけられた。
痛みに動けなくなっていると、床に座らされて後ろ手に手錠を掛けられた。
「潤!?」
「俺…こんなんだからさ。セックスするの、男でもいいんだよ…」
意味不明なことを言う。
言っておくが俺は、ドのつくストレートだ。
男には興味ない。
縛るのだって、女の子がいい。
なにいってんだ、コイツ…
「俺さぁ…こんななのに、性欲強くてさ…」
ズキンとした。
俺と同じだ。
「相手にしてもらえねーの…」
それも同じ。
「だから、今まで男と寝たこともあったんだよ?」
それは違う。俺はナイ。
「もう、持って行き場がないんだよ」
それは、凄く切羽詰まった声だった。
潤が、俺の頬に手をかけてくる。
上を向かせたかと思うと、キスをしてきた。
逃げられないと思った。