第11章 アップル・グリーンscene1-2
しばらくすると、相葉さんが風呂からあがる音が聞こえた。
見舞いにきて怪我をさせてしまった申し訳なさから、手を引いてやろうと脱衣所の扉の前で待っていた。
すると暫くごそごそしている音が聞こえ、なにか呟く声が聞こえた。
「ニノ、ありがとう…」
俺の心臓が跳ねた。
その言い方が、あんまりにもかわいらしくて。
それに、相葉さんの心を覗き見したみたいで、後ろめたくもなった。
「いいにおい…ニノのにおいだ…」
顔が赤くなっていくのがわかった。
なにいってんだ…俺のニオイなんて。
いい匂いって…
ばかじゃねえの?
そのとき、ガラッと脱衣所の扉が開いた。
「うわっ…びっくりしたぁ」
とっさに顔をそむけたけど、間に合わなくて。
「ほら、いくぞ」
腕をとってごまかした。
リビングでソファに座らせると、作っておいた氷嚢を渡した。
「氷嚢、作っておいたから。タオルひいて、それで暫く冷やしてろ」
ぶっきらぼうにそう言って、俺は風呂場に逃げた。
なにやってんだろ。俺。
あいつのあんな言葉…
そういえば聞いたことがなかった。
いつもストレートに俺に感情を表現してくるだけだったから。
あんなひとりごと…
なんだか考えていることが不毛で、俺は浴槽に沈んだ。