第11章 アップル・グリーンscene1-2
脱衣所からリビングへ戻って、ソファへ相葉さんを座らせた。
腰に打撲を負ったらしく、動きがへなちょこになってた。
「そういえば、相葉さん飯たべたの?」
「ん。撮影終わりに軽くケータリングあさってきたから大丈夫」
「そう」
とりあえず、髪まで泡まみれだったから、こいつを風呂に入れねばなるまい。
うちには、なんも気の利いたものはない。
缶コーヒーを取り出し相葉さんに投げた。
「じゃあそれでも飲んでおいて」
そう言うと、俺は風呂の準備をしにバスルームへ。
お湯を溜めながら、じっと水の流れを見ていた。
さっきまでのどす黒い感情は、収まっていた。
あいつの凄いところ。
俺が負に傾きそうになってると、あいつは意識しないで戻してくれる。
その天性の優しさで、頭では考えずに俺を助ける。
何度も救われてきた。
何度も縋った。
でもあいつはかけらもこちらに恩着せがましいことはいわない。
だから…
あいつは俺には無くてはならない存在で。
突き放しきれないでいるのは、あいつが必要だからで。
あいつがいなかったら、俺はもっと真っ黒になってて。
今こうしていられるのは、あいつのお陰で。
水の流れを見ながら、答えの出ない逡巡を続けた。