第11章 アップル・グリーンscene1-2
手足は落ちたが、服も髪の毛まで泡だらけ…
「待ってて」
俺は部屋に戻り、急いで服を掴んで戻った。
「とりあえずこれ着て」
こいつまで風邪をひかすわけにはいかない。
俺を見て、着替えにくそうな顔してたから、浴室に入って残りの掃除を始めた。
「洗濯機、借りていい?」
弱々しい声で言ってるのが聞こえる。
「いいよ。使って」
洗濯機をセットする音が聞こえる。
きっと今頃、めちゃへこんだ顔してるんだろう。
俺はシャワーで泡を流しながら、笑いたいのを必死に堪えた。
絶対あいつはなにかミラクルを起こす。
風呂場でコケるなんてベタなこと、普通好きなヤツの部屋でするか?
なんてかわいいヤツなんだ…
手を止めると、俺はまたあの黒い衝動を感じていた。
だめなのに。
大事にしたいのに。
大事な友達だから。
ずっと一緒にいてくれてるから。
だから触れないのに。
お前のほうから近寄ってくるなよ…
シャワーの音が、ずっと浴室に響いてた。