第11章 アップル・グリーンscene1-2
「え?Tシャツの替えないの?」
「洗濯してないからないの」
「もー!言ってよ!洗濯くらいするから!」
「いいよ!そんなことまでさせらんないよ」
「だって、ボタン、ポチって押すだけじゃん」
「だってその後たたんでクローゼット入れるの面倒じゃん」
「だから、そこまでやってあげるよ」
「いいって。もう…」
「だって俺は日立だよ」
「あんた炊飯器だろ!」
「ぐぬぬ…」
洗濯機は俺だっつーの。
「と、とりあえず、後で洗濯機の使い方、教えて?不便でしょ?」
「いいよ。熱下がったから。自分でやるよ」
「だめ。治り掛けが一番大事なんだから。たくさん汗かいてあったかくして寝るんだよ?」
「もー、かあちゃんかよ…」
こいつは柔和に見えるが、一旦いいだしたら利かない頑固な部分があって。
きっとその「頑固」の中には、俺のことも入ってて…
きっと今日は徹底的に病人扱いされんだろうな…
相葉さんがもっていたお盆をリビングのローテーブルに置く。
きのこのおじやと、冬瓜の煮物。
冬瓜が好きなんて言ったことないんだけど。
なんで知ってるんだろ。
目を上げると、相葉さんがこちらを見ている。
「ん?なに?」
無邪気に言うから、聞くのはやめた。