第10章 ラズベリーscene1
二宮先生の最後の宿題は、翔ちゃんに俺の気持ちを伝えるというものだった。
とても真剣な表情で、二宮先生は励ましてくれた。
「あなたのその気持ちは、きっと翔さんを幸せにするから。だから、怖がらないで言ってあげて?」
二宮先生は自信たっぷりに、親指を立てた。
俺の気持ちは、もう邪じゃなくなった。
翔ちゃんが半年前、俺の家に来た時…
最初は1泊だけの予定だった。
次の日オフで二人で部屋でだらだらしてた。
なんだか遅くなったから泊まることになった。
次の日、仕事から帰ると玄関に翔ちゃんが座ってて、俺を待ってた。
忘れ物しちゃった、と笑って。
またその日も喋ってるうちに遅くなったから、泊まることになった。
次の日からも翔ちゃんは、何かと理由をつけて家にくるようになった。
ずっと一緒にいても、ぜんぜん居心地が悪くないし、自然にいられた。
単純に、翔ちゃんがそういう気分なのかなと思ってた。
誰かと一緒にいたいだけなのかなって。
だから合鍵を渡した。
それから翔ちゃんは俺の家に住むようになった。
それが俺たちには自然だったから。
俺は、意識して翔ちゃんの「理由」を考えないようにしてた。
自分が邪な感情を抱いていたから。
でも、ここで俺から一歩踏み出す。
翔ちゃんを幸せにしたいから。