第1章 きみどり scene1
「起きてた…」
「マジで……」
大野さんが、どんどん俺の視界から消えていく。
最終的に大野さんは床に蹲ってしまった。
「お願い、かず。俺をみないで!」
伸び上がってみると、テーブルの向こうで蹲る大野さんは、耳どころか首まで真っ赤にしていた。
「聞こえてないと思ってたわけ?」
「わあああああああああ。何も言うなあああああああああああ」
「大野さん…」
「恥ずかしぃぃぃぃ…」
だめだこりゃ…しばらくほっとこうかな…
「だって俺、聞こえてないって。寝てるって思って…」
ほっとこ…
「だって俺、こんなにかずに好きっていうの、恥ずかしいと思わなくて…」
「え?」
「かずが、俺んとこ来てくれて、頼ってくれて、ほんでかわいいパジャマ着てくれて。俺、ほんと嬉しかったんだ」
これ、俺が聞いててもいいの?
「それにキスも気持ちいいし、抱きしめたら気持ちいいし。おまけに、俺のことすっごい気持よくしてくれたし」
聞いてるこっちが恥ずかしいんですけど…
「あーもう、何言ってるかわかんなくなってきたけど、俺、かずのこと好きだって思ったんだ。だって思っちゃったんだもん。仕方ないだろ!?」
「大野さ…」
「俺、そっち系の人じゃないよ!?でも、でもそう思っちゃったんだもん!気持ち悪い!?」
「そんなこと言ってないでしょ…もう、ちょっと冷静になってよ…俺、さっきなんていった?」
「え…?わかんないよ。さっきっていつ?」
「顔あげて。こっち向いてよ」
思いっきり剥れた顔で大野さんはこちらを見る。
「俺達は、さっきなにになった?って聞いたんだよ?」
「え?なににって…」
「わかんない?」
「わかんない…」
また思いっきり剥れる。
その顔をみてたら、なんだか笑えてきた。
「もー!笑うなよっ!教えてよ!」
「俺達は、恋人同士になったんだよ?」
「……え?」
「もう何回も言わないからな」
「…え?ちょっとまってかず。もう一回言って?」
「もう言わないって言っただろ?」
大野さんが立ち上がってソファの前に立つ。
「かず、もう一回…」
「もう言わないって」
「じゃ、わかった。かず。俺のこと好き?」
先ほどとは打って変わって、ざっくりと切り込んできた。