第1章 きみどり scene1
顔を見上げると、もう剥れた表情は無くなって、すごく真面目な顔になっていた。
「すきだよ」
そんな大野さんへのプレゼント。
こんな言葉一つで、喜んでくれるかな。
「ありがと…かず」
ガバっと抱きしめられた。
そのまま暫く大野さんは動かなかった。
俺も大野さんの身体に手を回して、抱きしめ返した。
ああ、幸せだ…
俺はいい匂いの睡眠薬を手に入れた。
大野さんは、何を手に入れたんだろう。
お互いにいいものを手に入れたに違いない、と思っておく。
「大野さん…すきだよ」
「かず、好きだよ」
にっこり微笑み合うと、どちらからともなく、唇を重ねた。
【END】