第10章 ラズベリーscene1
「よくこんなの見つけたね」
そう言ってまた翔ちゃんは笑った。
よし、今だ。
「えっと、後ね、これ」
今度はリボンのかかった小箱を差し出す。
「え?まだあるの?」
「うん。これは、おみやげじゃなくて、プレゼント」
「え?プレゼント?」
「そう」
「なんで…?」
「翔ちゃんと一緒だよ。プレゼントしたくなったの」
ほんとは二宮先生に言われたんだけど。
でもプレゼントは、本気で考えたんだ。
翔ちゃんが喜んでくれるようにって。
「…ありがとう…」
まだプレゼントも開けてないのに、小箱を手に翔ちゃんは言った。
さっきよりも頬を赤く染めて。
小箱を見つめている。
「開けてみて?」
「うん」
リボンを解いて、箱を開ける。
「わ…これ…」
「うん。俺が作ったの」
それはシルバーのキーホルダーで。
トップの部分をクレイ粘土で俺が作った。
今、個展のために借りてるスタジオでこっそり作ったものだ。
デザインから磨きまで、作ってて本当に楽しかった。
「クレイ粘土だから、そんな銀の純度高くないけど…」
「…ほんとに?作ってくれたの?」
「そうだよ」
そう言うと、翔ちゃんは黙り込んだ。
「翔ちゃん?」
「……ありがとう、智くん」
目が真っ赤になって、なんとか泣くのをこらえてる。
「しょ、翔ちゃん…」
「ごめん、泣かないから…」