第10章 ラズベリーscene1
すごくキスしたくなったけど、こんな邪な気持で翔ちゃんに触れていいかわからなかった。
それに、ここ外だし…
翔ちゃんが、水のボトルを俺に差し出す。
「あ、ありがとう」
「お水でよかった?」
「全然だよ。気を使わせてごめんね」
「いいんだよ。俺がやりたいからやってるんだよ」
俺と翔ちゃんの会話は、こうやって前に進まないことも多い。
「んふ…お互い譲らないよね」
「智くん頑固だから…」
そういうと、またふわっと笑った。
また、キスしたくなった。
水を飲んで、休憩を終えようとリュックを開けた。
ボトルをしまおうとすると、プレゼントが目に入った。
どうしよう。
今、渡そうか。
「あの。翔ちゃん?」
「ん?なに?」
「えっと…これ…」
そういって、俺は小さな紙袋を渡した。
「なに?」
「この前もらったチケットで、大英博物館展行ってきたの。おみやげ」
「え、ほんとに?嬉しい」
ちょっとほっぺを赤くして、翔ちゃんが喜んでくれた。
その顔をみるだけで、胸がきゅっとした。
「開けてみて?」
実は、もう一個買ったのだが、家に帰ってきたら、気になってたものの買ってこなかった物のほうが良くなり、もう一回一人で行ったのだ。
二枚、一人で使っちゃった。