第10章 ラズベリーscene1
そのまま翔ちゃんが泣き止むのを待った。
泣き止んでしばらくしたら、俺の顔を見て、にっこり笑った。
俺はとても嬉しくて、握った手をぎゅっとした。
そしたら、翔ちゃんもぎゅっと握り返してくれた。
「智くん、行こう。動物園」
「うん」
そういって二人で肩を並ばせ、歩き出した。
本当は手を繋いで歩きたかったけど。
でも二人の間の距離は、来る時よりも近くて。
動物園を回っている間も、肩が触れるような距離だった。
ふたりで回る動物園は、翔ちゃんがいろんなことを教えてくれて、初めて来る場所みたいに思えた。
翔ちゃんが嬉しそうに、俺に教えてくれることは俺の知らないことばかりで。
隅々まで見て回って、クタクタになった頃に、原っぱの中にベンチがあったので休むことにした。
そこは大きな動物がいないゾーンだったので、人があまりいなかった。
「結構、バレないもんだね」
「そうでしょ。ガチガチに変装したほうが目立つんだよ」
「ふふ…さすが翔ちゃんだね」
俺が笑うと、翔ちゃんもふんわり笑う。
その顔を見てたら、キスしたくなった。