第10章 ラズベリーscene1
真っ赤になって俯いていると、翔ちゃんも無言になった。
恐る恐る顔を上げると、翔ちゃんは口を片手で覆って真っ赤になって下を向いていた。
「翔ちゃん…?」
チラと俺のほうに目を向ける。
その目は涙が出てて。
「えっ!?翔ちゃん!?」
「ごめ…智く…」
それ以上言葉が出せないようで、左手で俺に、ストップをかけている。
「どうしたの?そんなに嫌だった?ごめんね……」
しょんぼりしてしまう。
やっぱりそうだよな…
俺、男だもん。
「ごめんね翔ちゃん…変なこと言って」
「ち…」
「え?」
「違うよ、智くん」
涙声の上、口を手で覆ってるからこもったようになってる声。
「俺、嬉しいんだよ?」
「え…」
「ちょっと待って。泣き止むから」
そういうと、ストップの手のまま下を向いてしまう。
そのままずっと翔ちゃんは泣き止まなくて。
俺は翔ちゃんの方へ歩み寄った。
気づいた翔ちゃんが目を上げた。
まだ目は涙があふれている。
俺は勇気を出して、ストップの手を取って、歩き出した。
券売機から離れ、上野公園の中を歩いていく。
なるべく人目がないところを選んで歩いた。