第10章 ラズベリーscene1
そうやっていつも笑っててほしいな。
翔ちゃんの横顔をみながら、ぼんやりと俺は思った。
上野につくと、まっすぐ動物園まで歩く。
ベビーカステラとかの誘惑には負けない。
広場に鳩がたくさんいて、すっごい面白い動きをしてても、見とれない。
今日は、翔ちゃんとデートなんだから。
「あ、じゃあ俺チケット買ってくるね」
券売機に駆け寄ってチケットを買う。
大人二人
二人だって。なんか照れる。
なんかデートみたい。
って、デートだよ!
え?でも、俺だけがデートって思ってたらダメなんじゃね?
翔ちゃんもデートって思ってなきゃ、成り立たなくね?
「智くん?」
二枚のチケットを持ったまま、佇んでしまった俺に、翔ちゃんが駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「あ…えっと…」
「ん?」
「翔ちゃん」
「なに?智くん」
「俺とデートしよ?」
思わず口をついて出てしまった。
翔ちゃんは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔の見本みたいな顔をした。
「あっ…!ちがくて!今のは心の声で…」
思ってたことがそのまんま口にでちゃった。
どうしよう、嫌われる。