第10章 ラズベリーscene1
木曜日の夜、翔ちゃんと話してたら、明日はちょっとだけ変装していこうってことになった。
でも変装って言っても、俺の場合は普通の格好して、オーラ消すだけだからなぁ…
朝にでもクローゼットを引っ掻き回して、かあちゃんとねえちゃんに買ってもらった服でも探そう。
そう思っていた。
そしたら…
「これ、プレゼント」
「え?」
「いいから、開けてみて?」
朝、朝食をダイニングで食べている時に、翔ちゃんがテーブルにシンプルな包装の紙包みを載せた。
「うん…」
今日俺は、翔ちゃんにプレゼントするという宿題をニノに貰っているのに、また翔ちゃんに先を越された。
へこむ…
がさがさと包装を破って開けてみると、Tシャツだった。
「今日、それ着てくれる?智くん」
「えっ!?」
「実は昨日買ってきてたの」
「な、なんで?」
「プレゼントしたくなったから」
そういって、微笑んでコーヒーを飲む。
翔ちゃんがじっと見てるから、服を取り出して、身体に当ててみる。
「サイズぴったり…」
「あ、そう?良かった」
「なんでわかったの?」
「そんなのだいたい見てりゃわかるよ」
それは、俺の好きなネイビー色のTシャツで。
胸にワンポイントがあるだけで、とてもシンプルなもので。
「変装だからあまり目立たないやつ選んだの」
そういってまた、翔ちゃんは微笑んだ。