第10章 ラズベリーscene1
タクシーでテレビ局に乗り付け、楽屋に向かう。
入ると早速みんなから心配される。
翔ちゃんは楽屋にはいなかったから、ちょっとホッとした。
「あーなーたー、何やってんのよ。昨日の今日で」
ニノは俺を心配するふりをして、ズルズルと隅っこに俺を連れて行く。
ああ…きっと宿題だ…
顔を寄せてくると、小さい声でコソコソ話しだす。
「で?先生にいうことは?」
「はぁ…一応…今朝…」
「押し倒したのか!?」
「な、なんでそんなわけないだろ!」
「しーっ!」
自分のほうが声が大きかったくせに、俺のせいにされた。
「どうやってやった?ん?」
「えと、無意識に掴みました」
「どこをだ!」
「え?だから手だよ!」
ニノはちょっと黙って、その後わざとらしく咳払いをした。
「先生が悪かった。邪だった」
「?」
「で、翔さんは?どんな反応だった?」
「真っ赤な顔してた。迷惑そうだった」
「はぁ!?」
「しーっ!」
「…先生が悪かった。なんで迷惑そうに見えたの?」
「え?だって熱出して迷惑かけたし、仕事出る直前だったし…」
そう言うと、二宮先生はまたどうしたらいいかわからない、という顔になった。
「あんた重症だわ…」