第10章 ラズベリーscene1
その時、本当に何も考えずに。
俺は翔ちゃんの手を握っていた。
もっと触っていて欲しくて。
その手に触りたくて。
どこにも行ってほしくなくて。
「智くん…?」
「あっ…」
翔ちゃんの顔をみたら、急にニノの宿題のこととか、今、手を握っていることとか、ぐわってなってパニックになった。
「あ、えと…」
「ど、どうしたの、智くん?」
えっと…どう言おう。
翔ちゃんも真っ赤になって、どうしていいかわからない顔をしてる。
そうしてる間に、手を離せばいいのに、離せなくて。
「あ…えーっと…智くん?」
「えっ?」
「俺、もう時間だから行くね?」
「あっ、うん。ごめんね」
ぱっとその手を離すと、翔ちゃんの手は名残惜しそうにそこに居た。
「翔ちゃん…?」
にっこり笑うと、俺のおでこをビシッと叩いて部屋を出ていった。
「あ、いってらっしゃい」
「いってきまーす」
どさくさに紛れて宿題ができた…
俺は火照った頬を叩きながら、目覚ましをセットして、布団に潜り込んだ。
翔ちゃんの手を握ってしまったことで、とんでもなく心臓が動いた。
早く熱さげないといけないのに、上がった。
ヨコシマが俺を誘惑する。
…ってやっぱり漢字わからない。