第10章 ラズベリーscene1
口から心臓が出そうで、上手く考えられない。
翔ちゃんのお説教も、なんだか心地いいメロディーに聞こえてくる。
「ちょ、ちょっと智くん!?」
また翔ちゃんの切羽詰まった声が聞こえたけど、ふわふわして気持ちよくなってきて返事ができない。
そのまま俺はふわふわに乗っかってしまった。
「はい…すいません…じゃあ…」
翔くんの電話してる声が聞こえた。
アレ?
俺、なにしてたんだっけ?
「智くん?」
「ん…」
「あ、起きた?」
「どうしたの?翔ちゃん」
俺はいつの間にかベッドに横たわっていた。
「どうしたのじゃないよ…」
「え?」
「あなた熱出してぶっ倒れたんだよ?」
「え?」
そういえば昨日は、いつになく長風呂したあげく、びしゃびしゃのままで寝てた…
「今日の収録、入りは直前でいいからって」
「あ、ハイ…すいません…」
「俺は打ち合わせあるから、もう出るからね?」
「はい…ごめんなさい…」
「熱はだいぶ下がったから、一人で来れるね?」
「うん」
「じゃあちゃんと目覚ましかけるんだよ」
「わかった」
「もう…ほんとに。だめだよ?」
そういいながら翔ちゃんは、俺のおでこに手をあてた。
「うん。これなら大丈夫かな」
そう言うと手を離していく。