第10章 ラズベリーscene1
「……くん?さとしくん!?智くん!!」
翔ちゃんの切羽詰まった声で目が覚めた。
飛び起きると、泣きそうな顔をした翔ちゃんがいた。
「どうしたの!?翔ちゃん!?」
そういうと、翔ちゃんは腰を抜かしたように後ろに座り込んだ。
「智くん…こんなところで寝ないでよ…」
「え?」
気がついたら、俺はテレビとローテーブルの間で寝てた。
「あ、ああ~…ごめんね…」
急に宿題のことを思い出して、うまく喋れなくなる。
「なんでこんなとこで寝てたの?」
「あ、なんか、えと」
「風邪ひいちゃうでしょ?」
そう言いながら、俺のおでこに手を当てる。
「うん、熱はなさそうだね」
「う、うん」
手を握るって宿題出されてるのに、あっさり翔ちゃんにはおでこに触られてしまった…
急に鼻がむずむずしてくる。
「ふぁ…」
翔ちゃんがティッシュを差し出す。
「ぶぁーっくしゅっ」
ティッシュを受け取る。
「ほら、智くん…」
「あい。ずみまぜん」
鼻をかむ。ぶびーっ
「こんなとこで寝たら風邪ひくのわかってるでしょ?」
「はい…そのとおりです…」
お説教モードに入ると、長い。
でも今日は、宿題のことで頭がいっぱいで、全然話が入ってこない。
どうしよう。どうやったら手握れる?