第10章 ラズベリーscene1
東京都美術館の特別展示は、大英博物館展だった。
なるべく人出のない時間を選んだつもりだったけど、ものすごい人出で。
こんな中に、俺とニノが行ったらダメだろう…
呆然とみてるとニノがこういった。
「だから朝イチにしようって言ったのに…」
でも、朝早いのはイヤって言ったのはコイツだ。
「一緒に見るのは無理そうね」
ちなみに遅れてきたのもコイツだ。
「どーする?大野さん」
「んー…どうしよっか。せっかく翔ちゃんにチケット貰ったし…」
「今日はやめて、別の日に来たら?」
「うん、そうする」
そういって、美術館を後にする。
いつも取材で行く地方の美術館は、貸しきってくれたりするから、こんなに人出があるなんて知らなかった。
次くるときは、変装ばっちりにしないと。
「大野さん、上野動物園でもいく?」
「え?ダメ」
「えっ、なに即答して」
「え…別に」
「なによ、なんかあんの?動物園に」
「いや、今度翔ちゃんと行くから」
「え!デートですか!?」
「ち、違うよ。そんなんじゃないよ」
「え?」
「美術館、一緒にいけなかったから、行くだけだよ」
「え、だからそれがデートっていうんじゃないんですか?大野さん」
「だから…違うよ。デートじゃないよ」
ちょっと、顔が赤くなってきた。