第10章 ラズベリーscene1
玄関の鍵を開けて中に入ると、リビングから灯りが漏れていた。
今日も起きてる。
そっとリビングの扉を開けたら、リビングのローテーブルに翔ちゃんが突っ伏して寝てた。
俺はとりあえず寝室から毛布を持ってきて翔ちゃんに掛けた。
時計をみたら、深夜2時を回っていた。
こんなに遅くまで待ってなくてもいいのに。
でも、いつも翔ちゃんは俺が帰ってくるまでこうやって待っててくれる。
だから俺も、打ち上げでどんなに遅くなっても必ず家に帰る。
こうやって翔ちゃんが待っててくれるから。
しばらく、寝顔を見つめる。
ちょっと疲れた顔をしている。
無理もない。
最近、立て続けに大きな仕事をしてる。
俺達も一緒に出演したりするけど、翔ちゃんの肩にかかった重責は俺たちの比じゃない。
変わってあげたいけど、俺には翔ちゃんほどの能力はないし。
でもこうやって大きな仕事を任されるってことは、翔ちゃんの評価を上げることに繋がる。
応援しなきゃいけない。
でも、俺にできることってなんだろう。
今のところ、なんにもできてない気がする。
そっと毛布の上から肩に触れる。
「なんにもできなくてごめんね…」