第9章 June bud scene1
座り込んで動かないから、手を差し出す。
「ハイ、ごめんね」
「やだ」
そういって、プイっと横向くの。
「シャレかよ…」
「え?」
「ほら、立てよ」
「しらない」
「あー…お前、いいんだな…?」
「え?」
「今日も、メチャクチャにしてやるぞ…?」
そう言うと、少しだけぶるっと震えたのがわかった。
もう、こいつのツボなんてわかってる。
「ふーん…」
「な、なによ…」
「やめた」
「え?」
「今日は風呂入って寝る」
そう言って背中を向けて歩き出す。
「まぁーくーん…」
淋しげな声を出しても無視する。
リビングのドアを開けて、和也が来ないのを確認して閉める。
ソファーに座って暫く待つ。
10分待って迎えに行く。
まだ同じ場所に座り込んでる。
「かーず」
そう呼びかけると、子犬のような目で俺を見る。
「ホラ、こっちこいよ」
べそべそしながら立ち上がって、俺のところにとぼとぼ歩いてくる。
こいつが、今までの彼女と上手くいかなかったのは、こういう重いところがあるから。
とっかえひっかえヤってたのは、淋しいから。
どうやらコイツの心には永遠に埋まらない、淋しい穴ってのがあるようで。
淋しいからセックスばっかりしてたみたいで。