第9章 June bud scene1
二人で、ベッドに手足を投げ出して倒れこむ。
シーツも俺たちの身体も、自分たちの出したモノでベトベト。
そんなのいつものことだから、二人でそのまま寝転がる。
「はーっ…今日もヤったぁ…」
「なんなのよ…その底なし沼の体力」
「俺は和也とのセックスのためなら、どんどん力湧くんだよ」
「アホ…」
「だってお前、最高にキモチイイんだもん」
「バカ…」
「俺から離れたら、殺すからな」
なんでもないように言っているが、結構本気の脅しをかける。
そんな俺を見透かして、和也は上目遣いで薄く笑って俺を見る。
「どうやって殺してくれるの?」
かわいい顔して。
「まず死ぬ一歩手前までヤる」
「今と変わんないじゃん」
和也が笑う。
「それから…」
上体を起こして、和也の首に手を掛ける。
「どうしようかな。ただ締めるんじゃ普通だし」
「じゃあ、あれと同じにしてよ」
「なに?」
「近松心中」
この前一緒に見た舞台のDVDの名前を出す。
「赤い紐、ないよ?」
「そんなの買ってきてよ」
「じゃあ用意しとく」
そういって、和也の首を撫で回す。
本当にそんな日がきたら。
俺は迷いなく、こいつを殺せるだろう。