第8章 ワインレッドscene2
潤の涙が止まるまで、俺はずっと潤を抱きしめていた。
「…落ち着いた?」
こくんと小さく潤が頷く。
「目、腫れちゃうな。今、氷持ってくるから」
立ち上がると、服の袖を潤が掴む。
「しょ…くん…?」
「なに?」
「も、一回…」
「え?」
「もう一回、言って?」
泣きはらした目で、俺をまっすぐ見て言うから、堪らなく愛おしくなって。
また抱きしめてしまう。
「潤…好きだよ…」
「…もっと…」
「好き…潤が好きだよ」
「もっと」
もっと、もっと、と潤が言うまま、俺は好きを言い続けた。
潤が満足して俺から身体を離すと、そこにはあの日のような、華が咲いたような微笑みがあった。
「ありがとう…翔くん」
「潤も、言って?」
「え?」
「あの日、俺にずっと言ってくれたみたいに」
「え…」
「聞かせて?潤の声…」
「うん…翔くん、好きだよ…」
「うん」
「好きだよ、翔くん」
「うん」
「ずっと前から好きだよ」
「うん」