第8章 ワインレッドscene2
「そうやって、俺の心を嬲って復讐してるの?」
俺は首を横に振る。
「そんなに俺が憎いの?」
また首を振って否定する。
「じゃあなんでこんなことするんだよ…!」
潤が俺の脇腹を、こぶしで叩く。
何回も、何回も。
潤の気の済むまで、俺は何も言わず待った。
「ねぇ…何か言ってよぉ…」
泣き叫ぶように潤が言っても、俺は潤を抱きしめ続けた。
潤の泣き声が、だんだん小さくなり。
鼻をすする音が聞こえてくるころ、俺は潤を離して、腕を掴んだ。
そして顔を覗きこむ。
「潤…?」
潤は目を上げない。
「潤…こっち見て?」
それでも潤は見ようとしない。
「最初は…」
そういうと、言葉を切った。
暫く何も言えずにいると、潤が俺の顔を見る。
「最初は、確かに憎かった」
潤の目から光が失われていく。
でも俺は、潤に届くようにゆっくりと語った。