第8章 ワインレッドscene2
潤の荒い息の音と、俺の荒い息の音が、湿度が限界まで高くなった浴室で混ざる。
「潤…」
俺は、その手を取って潤を立ち上がらせた。
力が全く入らず、潤は崩れ落ちる。
「翔くん…ごめん…」
潤の口から、再び謝罪の言葉が漏れる。
「俺、翔くんの男としてのプライド、ズタズタにしたんだね…」
その言葉に、俺は何も答えられず。
「俺も同じことしてもらえば、翔くんの気持ちがわかるかと思った」
「え?」
「けど…ごめん…俺、わからなかった…わからなかった…ごめん…」
「潤…」
「翔くんに触って貰えるのがうれしくて、俺で気持よくなってもらえるのがうれしくて…わからなかった」
「潤、もういいから」
「わからなかったのに、俺、気持よくて…我慢できなかった…ごめん…翔くん…ごめん…」
もう俺は何も言えなくなった。
「翔くんが、一緒にイキたいって言ってくれて、もう我慢できなかった。気持ちよかった…ごめん…」
そう言って立ちあがろうとするが、また崩れる。
思わず手を出し、抱きとめる。
「潤…」
そう呼びかけても、むせび泣く潤には届かなくて。
どうしたらいいか、わからなくて。
潤の身体を、ぎゅっと抱きしめるしかできなかった。