第8章 ワインレッドscene2
「じゃあ…」
「え?」
「なんでキスさせたの?」
「え?あんなのふざけて…」
「なんで小栗に肩組ませるの?」
「翔くん…?」
もう何を言ってるのかわからなくなる。
「誰でもいいんだ?潤は」
「違う!」
「じゃあ、あれはなんだよ」
「…なんでそんなこと言うの?」
そういうと、涙を溢した。
そしてこう言った。
「俺のこと、何だと思ってるの?」
潤は、唇を噛んで下を向いてしまった。
「…俺が好きなのは翔くんだけだよ?」
めまいがした。
同時に、体中の血液が沸騰する。
「翔くんが拒絶したんじゃん…俺のこと」
溢した涙を拭おうともせず、潤が言う。
「許してもらおうとは思ってないよ?でも…こんなの酷いよ…」
ぽろぽろと綺麗な涙をこぼしながら、こいつの口からは、俺の血を沸騰させるようなセリフが出てくる。
じわり、とまた黒い塊が俺の足元を登る。
「…気持ちよかった?」
「…え?」
「俺のこと、抱いて」
「翔くん…?」
「俺のこと、女扱いして気持ちよかった?」
「ごめん…」
「ねえ?気持ちよかった?」
「ごめん、翔くん…」
「言えよ。気持ちよかった?」
「…よかった…」
「ふーん…」
その時の俺の中にある感情は、どす黒いもので…
潤のことをどうやって痛めつけてやろうか、そのことばかり考えていて。