第7章 ベルフラワーscene1
やっとの思いで車にたどり着く。
精算を済ませて車に乗り込むと、大野さんと目があって。
しばらくそのまま見つめ合って。
そしたら、大野さんからまたキスがきて。
「潤…気持よかった」
「えっ…もう…」
俺は赤くなって、前を見る。
「ば、ばかなこと言ってないの!」
そういうと俺は車を駐車場から出した。
隣から、くっくと笑う声が聞こえる。
「外でヤルと、潤すげえ感じるな」
「やっ!違うって!」
「だって…いつもより色っぽかったもん」
「もう!やめてよ!」
「おかしくなっちゃうって初めて聞いたし…」
「やーーー!もうーーー!」
もう汗が止らない。
「今度ベランダでやるか…」
ぼそっと大野さんが嫌なことをつぶやいた。
「それだけは…勘弁して…」
「嘘だよーっ」
そういうと、大野さんは爆笑した。
「もー…ひどい…」
俺は涙目になって運転した。
帰りの道中は、とても楽しくて。
大野さんもまた、思い出を話してくれたし、俺も話した。
俺の話で一番ウケたのが、としまえんの話だった。
「え?潤の家って豊島区だっけ」
「うん。そうだよ」
「あれ?としまえんって、豊島区?」
「違う。あれ、練馬」
「あれ?そうなの?」
「昔、豊島って地名についてたんだって」
「へぇー」
「子供の頃はとしまえん行くの一大イベントでさ」
「そうだろうなぁ。俺もよみうりランド行きたくてたまらなかったもん」
「あれ、ほら、あのなんだっけ。あの乗り物」
「え?」
「目黒さんと一緒に乗ったやつ」
「ああ、バイキング」
「そうバイキング。アレね、昔からあって」
「そうだよな。結構古そうだった」
「あの、先頭にたってる海賊がさ、怖いんだよ…」
「え?」
「別に姿が怖いってんじゃないの」
「うん」
「あれね、ずっと動いてるじゃん?」
「動いてる?」
「ネジが上手く止まってないのかわからないけど、なんか揺れてるんだよ」
「ああ!確かそうだったかも!」
「俺の小さいころから、あれでさ。いつこっちに落ちてくるかってもう、それが怖くて」
そういうと大野さんは爆笑した。
「そうだ!そうだ!うん、揺れてたわ、アイツ」
「目黒さんと乗った時も、かなり揺れてたじゃん?俺、もう気が気じゃなくて…」
大野さんは腹を抱えて笑い出した。