第7章 ベルフラワーscene1
車に乗り込むなり、大野さんから注文がでる。
「潤、今日も三鷹の方行って」
「え?また思い出めぐり?」
「そう。お前と行きたいところがあるの」
嬉しい事をさらっと言ってくれて…
思わずちょっと泣きそうになる。
「わかった。昨日の通りでいいの?」
「あ、違う通りを通る」
そういうと、また大野さんナビで車を進める。
「今日早く終わってラッキーだったな」
「え?」
「早い時間じゃないと、行けないところだから」
「そうなんだ」
撮影所を出ると、そのまま右へ進む。
多摩川の土手沿いを走る。
「あ…多摩川…」
「うん?」
「昔、とうちゃんがバーベキューやりたがったんだけどさ。家じゃちょっと出来なくてさ。場所の都合で」
「へえ。実家、場所ないの?庭とか」
「いや、あるんだけど。かあちゃんが。カーテンに匂い付くって…」
ああ、あのお母さん…強烈な…
「仕方ないから、わざわざここまできたんだよ」
「へえ。でも場所的にはいいんじゃない?」
「俺はよみうりランドがいいって言ったのに…」
小さいころの大野さんを想像して、なんだか笑えた。
「潤…何笑ってんだよ」
「え?だって。かわいいなって」
そういうと、大野さんがいたずらっぽく笑う。
あ、しまった。
こんな笑い方をするときは、必ずなんかイタズラされる時だ。
と思ってると、すっと手が俺の腿に伸びてくる。
「潤のほうがかわいいよ?」
その手が俺の真ん中に伸びてきて、さらっと触れていく。
「あっ…やめてよ…運転中…」
「ほら、もう顔まっかじゃん」
今日は昨日と違って、まだお日様が出てるから、暗闇に隠れることもできない。
「そ、そんなことするから…」
また手が伸びてきて、今度は俺の耳をすっとなぞっていく。
「あっ…大野さん…やめて…」
「いろっぽい声だすなよ」
もう身体が敏感になって、どこを触られても、身体が反応してしまう。
「お願い…運転させて…事故る…」