第6章 アップル・グリーンscene1
って、言ってもまだすぐに出られない。
今、ブラストに向けて、撮影所で個別で映像の収録をやってて。
個別だからニノが休みでも影響はない。
順番に撮影を終えるのを待っている。
今は松潤の順番。
リーダーは隣のソファで爆睡している。
「もう、あんまりニノ困らせんなよ?」
手にかかったコーヒーを拭きながら翔ちゃんが釘をさす。
「わぁかってるよー。俺、そこまでアホじゃないよぉ」
「おまえのそのテンションが心配なんだよっ!」
翔ちゃんがブツブツ言ってると、リーダーが眠い目を擦って起きてきた。
「相葉ちゃん…カズんとこいくの?」
「え?うん。ちゃんと、マネにもらった仕事だよっ!」
「じゃあさぁ、これ、渡しておいて」
そう言いながら、リーダーが頭の下にしていたカバンから取り出したのは一冊の文庫本。
「これねえ、長く借りてて。カズが早く読みたいっていうから。持ってってやって?」
なんだか、長年連れ添った恋人みたいな雰囲気でリーダーが言う。
「うん。わかった」
羨ましいと思った。
ニノはどうやったって、俺とはリーダーみたいな雰囲気で喋ってくれない。
リーダーや翔ちゃんには子犬みたいにじゃれつくのに。
俺には…俺には…飛び蹴りしたり、嘘教えたり…。荷物持たせたり。
なんか俺、虐待されてね?
「お先ー。次どうぞ。相葉さん」
松潤が撮影を終えて、楽屋に帰ってきた。
そうニノは松潤にも態度が違うんだ。
なんか、対等っていうか。同期だし、同じ年だし。
差別だ…
「ん?相葉さん?」
なんで松潤ばっかり…
「おーい!相葉さーん?」
いきなり、松潤の顔がドアップで俺の目の前にあった。
「わわわっ!」
「あーいばさーん。次!」
「あっ!そう!ごめんねっ!」
「なに?目ぇ開けて寝てたの?」
「ち、違います。違います」
松潤の前じゃ、ふざけらんない。
こいつ怒ると怖いから。
背を向けて立ち上がって、行こうとしたら、いきなり襟首を掴まれて楽屋の隅っこに連れていかれた。
「なっななに!?松潤!?」
「相葉さん…俺、これからもう帰るから。今日、頑張りなよ?」
松潤から渡されたのは、「ジェリー」と書いてある小さな袋。
「これがあれば、痛くないから」
「はぁ?」