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カラフルⅠ【気象系BL小説】

第5章 退紅(あらそめ)scene1


家に着くと、無言で車を降りる。

この人がいつもそうしていたように。

扉を締める前に、智くんの顔を初めて見る。

少し、痩せたように見えた。

「ここ、俺んちだけど。どうする?」

少し目を見開いて、俺の顔を見つめた。

俺は答えを待って、その目を見続ける。

「…降りる」

ドアを開けて降り立ったが、一向に動こうとしない。

俺は無視して、地下エントランスへゆっくり足を運ぶ。

しばらくすると、俺を追いかけて足音が近づいてきた。

部屋に続くエレベーターに乗り込むと、また扉の外で俺を見ている。

「乗らないの?」

挑発するように聞いてやる。

一瞬顔を歪めて、泣きそうな顔になりながら、エレベーターに乗り込んできた。

その顔は俺をゾクゾクさせた。


エレベーターを降りると、部屋へ向かう。

鍵を開けて中に入ると、智くんの手首を掴んで中へ引きずり込む。

「やっ…」

声を上げて玄関に倒れこむ。

素早く鍵を掛けると、ポケットからもう一個鍵束を取り出して、内側から鍵を掛ける。

「な、んで…?」

倒れたまま、智くんが訊く。

それに答えず、靴を脱いで部屋に上がる。

「なに、これ?なんで内鍵なんて掛けてるの?」

そうだ、この人ドラマやってたんだった。

「防犯のためだよ?」

薄ら笑いを浮かべて答えてやった。

嘘だよ。

本当はあなたを閉じ込めておくためだよ。


この日のために、準備したんだよ。
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