第5章 退紅(あらそめ)scene1
俺が目の端で確認すると、背を向けて走り去って行った。
唇を離し、身体を起こすと雅紀に頬を叩かれた。
「さっき居たの、リーダーだよね?」
「さぁ…?」
「翔ちゃん、この前からずっとおかしい。リーダーのこと見てない」
「なんで俺が?」
「だってずっと見てたじゃん。あんなにリーダーのこと見てたじゃん。どうしちゃったの!?一体」
「別に見てないよ」
「俺にはわかるよ?ずっと、ずっと。翔ちゃんずっと見てたじゃん」
そういうと、雅紀は泣きだした。
俺はこいつのこういう優しいところにつけこんでいる。
「雅紀…泣くなよ…」
そういうと、俺はまたキスをしようとした。
それを振りほどくと、きつい目で睨む。
「もうリーダー居ないから、そんなことしても無駄だよ」
そういうと、雅紀は去っていった。
笑いがこみ上げてきて、一人笑った。
雅紀には悪いことをした。
でも、これで。
あとはあっちがどう出てくるのか。
待つだけだ。
長い時間が始まろうとしていた。