第5章 退紅(あらそめ)scene1
今思うと、俺はおかしくなっていたのかもしれない。
自白剤を手に入れて、俺はドレッドヘアに一つ頼み事をした。
催淫剤はないか、と。
ドレッドヘアはにやっと笑って、別の席へ行くと、すぐ戻ってきた。
「こればっかしはヤバイよ?いいの?」
頷くと、俺に白い錠剤の二つ入ったビニール袋をくれた。
「金はいいよ。俺のおごり」
そういうとドレッドヘアは俺に顔を近づけてきて、
「一粒だけだぞ。それ以上やると、中毒になっからな?」
そういうと、顔を離した。
「彼女、大事にな」
そう言ってドレッドヘアは帰っていった。
俺は、すぐに家に帰った。
家に帰ると、ひたすらパソコンに向かった。
あの時の俺のこの状態をどう説明すればいいかわからない。
熱に浮かされたように、画面に向かっていた。
震える手で俺は、ある策略を練っていった。
彼を陥れるための策を。
朝になり、その計画が出来上がると、そのまま床に倒れこんだ。
笑いがこみ上げてきて、俺は暫く笑った。
昨夜来ていた上着を取り出すと、ポケットに手をつっこみ、自白剤と催淫剤を取り出した。
これで楽になれる。
自分のこの苦しい心に決着をつけられると思うと、非合法なことでも躊躇なくやれる気がした。
とにかくこの苦しい思いから逃げたかった。
薬を手に入れた俺は、破滅してもいいと思った。
そう、智くんと一緒に。
そのまま俺は、床に蹲って眠りに落ちた。