第30章 マロンscene2+green
◇マロンside
「雅紀っ!」
和也が駆け寄る。
雅紀を抱きしめると、ぎりっと歯噛みした。
俺は玄関に入って、松にぃからナイフを取り上げた。
にぃは動かなかった。
顔が真っ青だった。
「にぃは悪くないから…」
雅紀が微笑みながら言う。
「もう喋るな!」
そう言ってにぃの部屋に上がり込んだ。
洗面所からタオルを掴んで戻る。
脇腹に押し当てると、雅紀の顔が歪んだ。
「和也、押さえてろ」
スマホを取り出して、達也くんに連絡した。
俺達だけの問題じゃなくなったから。
『もしもし…』
眠そうな声だった。
「ごめんね達也くん」
『潤かよ…どうした?』
「冷静に聞いて。今、松にぃが雅紀を刺した」
『え…?』
「専務に連絡するからね?」
『あ、ああ…わかった』
「あと、そちらのメンバーに連絡するかは任せるから」
『そっちはどうすんだよ』
「無論、連絡する」
『わかった。病院はあそこだな?』
「うん。あそこ連れてく」
『じゃ、あとで』
電話が切れるとすぐに専務に連絡した。
状況を説明すると、やはり事務所の懇意にしている病院に行けと言われた。
その後、リーダーに連絡した。
得体の知れない不安が突き上げていた。