第30章 マロンscene2+green
◆green side
にぃの家に行ってみた。
外から見上げたら、電気がついていた。
誰かいるかもしれない。
けど、もういい。
出るときに掴んできたカバンには、にぃの家の鍵が入っていた。
オートロックを開けて中に進んだ。
部屋の前で、インターホンを鳴らす。
何も音がしなかったけど、暫くしたらドアが開いた。
ドアの中に入ると、にぃの部屋の鍵を差し出した。
「俺の部屋の鍵、返して」
そういうと、にぃの顔が歪んだ。
「俺はお前のこと、ペットだなんて思ってない」
「うん…そうだったんだろうね。わかるよ…でも。今は?」
にぃは俺から目を逸らさなかった。
「今だって…そうだよ?」
「無理…しなくていいから…」
嘘ついてるのわかるよ。
だって6年も一緒にいたんだよ?
下を向いたら、涙が出てきた。
でももう悲しくない。
俺にはあいつらがいるから。
「にぃ、俺はね。あいつらに愛してもらってわかったよ…」
「何が…」
「愛されるってこと」
そう言って背中を向けた。
「ごめんね。にぃ。ありがとう」
ドアを開けようとした、その瞬間、右の脇腹に鈍い痛みを感じた。