第30章 マロンscene2+green
◆green side
ペット…
俺はペットだったのか…
そう言われると腑に落ちることはある。
俺が犬みたいに、にぃにまとわりつくのが好きだった。
常に可愛らしくいることを求められてた気がする。
セックスのときも。
日常も。
女の子みたいな仕草をすると喜んだ。
決してそれは、素の俺じゃなかった。
なんだ…
俺、愛されてなかったんだ…
涙も出なかった。
ニノがしゃがみこんで俺の顔を覗きこんだ。
「6年も一緒にいたんだ。真実だったこともあるから…」
うん…わかった…
ありがとう。
すっと俺の心に、二人が入ってきた。
俺のことを見つめる、2つの顔。
この顔は、決して俺をペットだとは思っていない。
”愛してる”と言ってくれた。
その言葉が。
どれだけ俺の心を溶かしたか。
肩に乗っている潤の手が温かい。
俺を見つめるニノの視線が温かい。
「俺…ちゃんと別れてくる」
そういうと、ニノからスマホを取って駈け出した。
後ろでニノが何か叫んでいたけど、聞こえなかった。