第30章 マロンscene2+green
◇マロンside
雅紀の顔を見た。
怯えが目に出た。
和也がスマホを奪いとった。
「にぃ?二宮です」
和也の顔は余裕がある。
「うん。もうね、雅紀は俺達のものなの。だから手、引いてもらえる?」
雅紀が今度は和也の顔を凝視した。
「俺、もう雅紀手放さないから」
やっぱり俺と和也の考えていることは同じだったようだ。
「アンタと違って、愛してるから。雅紀のこと…」
低い声だった。
誰かを威嚇するときに出す声。
めったに俺たちには聞かせない声。
男の声。
「アンタの愛はさ…もう枯れてるんじゃないの…?」
和也が雅紀の顔を見ながら言った。
それは、決定的な刻印だった。
雅紀の顔が歪んだ。
雅紀が押せない以上、これは俺達がやる仕事だった。
別れの刻印。
「最初は愛だったかもしれないよ?けど、今、アンタのそれって愛なの?にぃ」
雅紀が床に崩れ落ちた。
俺はそっと傍に近づいて、肩を抱く。
「アンタがどんだけ努力したかわかるけどさ…疲れたんでしょ?」
和也が、みたことないような顔で笑った。
「雅紀はアンタのペットじゃねーんだよ」
そういうと、通話を切った。
そのままスマホを握りしめて和也は動かなかった。