第30章 マロンscene2+green
◇マロンside
「雅紀、松にぃとなんかあったの?」
ビクッと身体が震えるのがわかった。
「もしかして…」
和也の顔が青ざめた。
「違う…」
雅紀がやっと口を開いた。
なんのことだ?
「にぃの部屋に、長い髪の毛が落ちてた…」
「え…?」
それきり、雅紀は堅く口を閉ざした。
目は伏せられて、何も見ようとしなかった。
少し震えていた。
だんだん震えが大きくなってきた。
真っ青な顔で。
俺は雅紀の腕を引き寄せて抱きしめた。
和也は青い顔をしながら、ただそれを見ていた。
目で合図すると、和也も抱きついてきた。
二人で服を脱いで雅紀を温めた。
歯の根が合わないほど、雅紀は凍えていた。
身体だけじゃなく、心も。
それだけじゃ足りなくて、寝室へ連れて行って布団に入れた。
三人でずっと雅紀の震えが止まるまで抱き合っていた。
それは長い時間かかった。
震えが止まる頃には、雅紀は眠っていた。
魂も何もかも抜け落ちたような顔をして、雅紀は眠っていた。
俺達はただ呆然とその寝顔を見ていた。