第30章 マロンscene2+green
◇マロンside
俺は和也に上着を掛けた。
「ありがと…」
和也は受け取ると、前を少し掛けあわせた。
雅紀はなにも喋らない。
ただ、俺と和也の手をぎゅっと握って離さない。
バスローブの隙間から見える鎖骨は浮き出ていて。
急激に雅紀が痩せたことを物語っていて。
なぜさっきそれに気づかなかったかと思った。
「相葉さん…何か言って?」
和也が切なそうな声をだした。
祈るような、そんな声。
スマホの着信音が響いた。
俺のスマホだ。
雅紀の手を離すと、カバンを探って取り出した。
達也くんからだった。
「もしもし…」
『あ、潤?』
「お疲れ様です」
『相葉さ、生きてる?』
「は?」
『ごめん。いきなり。なんか松岡の家、出て行ったらしいんだよ』
「え?」
『なんか最近変わった様子ない?』
「あ…ええ…」
『そっか…隠してんのか…お前ら、めでたいことあったばっかだもんな…』
「あ、まあ…」
『俺からの電話も出ないからさ。会ったら電話出るよう言っといて』
「はい、わかりました」
そう言うと電話は切れた。