第30章 マロンscene2+green
◇マロンside
雅紀が壊れた。
気がついたら雅紀は泣いていて。
キスしながら頬を伝ってきた生暖かい液体で初めてそれを知った。
「雅紀…?」
俺が声をだすと、和也も気づいた。
「相葉さん…?」
そのまま雅紀は床に崩れ落ちた。
「もっと…忘れさせてよ…」
呻くように雅紀は言った。
「どうしたの…?」
和也がしゃがんで雅紀の顔を覗きこんだ。
「ね、シよ?三人で…」
涙で濡れた顔を雅紀は隠そうともせず上げた。
その眼の色は必死で。
和也が雅紀を抱きしめた。
「どうしたの…?」
和也は抱きしめながら俺を見上げた。
「どうして…?」
俺の胸に突き刺さった問は、でも俺が思っていたものとは違うもので。
「なんで泣いてるの?」
「わからない…」
そのまま和也は雅紀を抱きしめ続けた。
いつまで経っても雅紀の嗚咽は止まることがなくて。
俺は雅紀を立ち上がらせると、ソファへ座らせた。
和也はずっと雅紀の手を握っていた。
二人で雅紀を挟むように座った。
雅紀の目は俺たちを見ていなかった。
魂が抜けてしまったように、呆然としていた。