第5章 退紅(あらそめ)scene1
シャンパンを注ぐと、二人で乾杯した。
冷たくて、少し刺激のある液体が喉を滑っていく。
シャワーと食事で火照っていた喉に気持ちよかった。
暫く、二人でシャンパンを味わう。
智くんの頬がほんのりと色づく頃、酒のせいか俺の我慢は限界にきていた。
そんな俺の心中を察したのか、智くんが俺の手を取って立ち上がった。
「いこ?」
そういうと、ベッドルームへ連れていかれた。
ベッドルームは薄暗く明かりがついていて、窓には東京の夜景が広がっていた。
星空にも見えるその中で、この男を抱ける。
そう思うと、俺の背中がゾクリとした。
ベッドは二つあって、その手前に、智くんは座った。
ここにきて、俺の理性がまたブレーキを掛ける。
無駄な抵抗だとわかっていても。
そこに立ち尽くして、智くんを見つめる。
「翔くん…?」
俺を見上げる顔には、これからいやらしいことをするというのに、かけらもそんなことは思ってない、という表情があった。
でも、次の瞬間、微笑んだかと思うと舌なめずりをした。
驚いていると、俺のバスローブの間を割って、智くんの顔が入ってきた。
すでに半分勃っているそれを、迷うことなく口に含んで、俺を愛撫し始めた。
俺の足元で跪いて、俺を咥え込む。
あまりにも性急な展開に、俺は為す術もなく身を任せる。
そっと右手が伸びてきて、俺を掴むと扱き始める。
先端を智くんの口が、舌が嬲る。
少し濡れた髪の先に見える瞳は、妖艶な炎を湛えていて。
俺は堪らず、両手で智くんの頭を持った。
「ああっ…智くん…気持ちいい…」
そういうと、一層動きが早まった。
「あっ…も、ダメ…」
頭を持つ手に力が入る。
でもその動きを止めることはできない。
気持よくて、止めることができない。
ぐちゅっぐちゅっと淫らな音をたてて、更に動きが早まると、俺はもう我慢できなかった。
「あっ…智くん…も、イク…」
智くんの口から出て行くのも間に合わず、俺はその人の口のなかにすべてを放ってしまった。
智くんは、ニッと笑うと、それをすべて飲み込んだ。