第30章 マロンscene2+green
◆green side
シャワーを浴びて戻ったら、にぃの姿はなかった。
どこかへ出かけたようだった。
俺はスマホを取り出した。
アドレスからあいつの名前を出す。
でも閉じた。
ぼーっとその場に立ち尽くした。
にぃの笑顔、フィジー以来見ていない。
俺といても、もう楽しくないのかな。
もう好きじゃないのかな…
愛されてないのかな…
スマホに着信の音が鳴る。
画面を見ると達也くんだった。
「もしもし…?」
『あ、相葉?』
「あ、はい…」
『なんだよ…ケンカでもしたの?』
「え…?」
『今、松岡、俺んちにいるから』
「あ、そうなんですか…」
にぃの家と、達也くんの家はごく近所で、歩いても行ける場所だった。
『なんか娘の顔見たくなったってきたんだけどさ、死にそうな顔してるからさ…どうしたのかと思って』
「いえ…俺にもわかんない…」
『何おまえまで死にそうな声だしてんだよ…』
「わかんなくて…俺…」
『大丈夫か?相葉』
「うん…大丈夫です…」
『俺にできることあるか?』
「ううん…俺にもわけわからないんで…」
『そっか…なんかあったら電話しろよ?』
「ありがとう…達也くん」
『おう…じゃな』
電話が切れても、俺はそのまま動けなかった。