第29章 ラズベリーscene4
ぐっとお父さんは詰まった。
翔ちゃんが俺の言葉を継いだ。
「俺も、一緒に過ごすうちにもっと智くんを好きになって…もう、俺の人生になくてはならない人になった」
お父さんが口を覆った。
「翔…それはいわゆる同性愛ということか」
「違う!俺は、智くんだから好きになった。別に男だからってことじゃない」
「お父さん…そんなことないって言ったでしょ」
お母さんが横から心配そうに俺を見る。
「そこに何が残るんだ…翔」
「…え?」
「お前たちの未来に何が残る?男同士でなにができるんだ!」
強い口調に翔ちゃんは黙り込んだ。
「何も残せません」
俺は口を開いた。
この前言われてからずっと考えていた。
「でも…」
みんなが俺の顔を見た。
「翔さんの幸せは残ります」
応接室は沈黙に包まれた。
「翔さんを幸せにします。一生」
俺は立ちあがった。
「許すことなんてできないと思います。けど、俺はもう翔さんしかいないと思っています」
頭を下げた。
「俺のこと、許さなくていいです。でも翔ちゃんは…翔さんのことは許してあげて下さい」
頭を下げたまま言い切った。
お父さんが立ちあがった。
俺はふっとばされた。