第29章 ラズベリーscene4
呼び鈴を押すと、すぐに扉が開いた。
「あ、いらっしゃい。大野くん」
お母さんが微笑んだ。
「あ、ご無沙汰しています」
きちんと頭を下げると、お母さんは驚いた顔をしていた。
「あら…なんか…」
「え?」
「ずいぶん、今日はきちんとしてるのねえ…」
「え、だって…」
「ふふ…いいことでござる」
お母さんはそういうと扉の中に入った。
「智くん…あんまり気にしないで…」
翔ちゃんは脱力しながら笑ってた。
変わった母ちゃんだよな…
いや、人のうちのこと言えないけど…
家に入ると、応接室に通された。
どうしよう座布団ない…
どうやって挨拶しよう…
ふかふかのソファに腰掛けた。
翔ちゃんの隣。
お母さんがコーヒーを出してくれる。
「あ、お母さん、コレ…」
そう言って、菓子箱を差し出した。
虎屋の羊羹。
なんでどこのうちの母ちゃんもあんこ好きなんだろう…
「あらっ虎屋!ありがとう!大野くん」
嬉しそうに受け取ってくれた。
花園饅頭の何倍も値段がするから驚いた。
うちの母ちゃんのほうが安上がりでいい。