第29章 ラズベリーscene4
毎朝、欠かさず隣のお稲荷さんにお参りした。
その日は二人で朝から水でシャワーしてからお参りに行った。
塩水で口を漱いで家を出た。
小さい赤い鳥居を潜って、祠の前に出る。
とっておきの揚げを供えた。
神妙に二人で手を合わあせた。
深く祈りを捧げた。
誰のためでもなく、俺たちのためでもなく。
不思議な気分だった。
皆が幸せで豊かになれるよう祈った。
翔ちゃんの顔をみると微笑んだ。
手を握ってまた赤い鳥居を潜った。
今日は、翔ちゃんの家へ行く。
翔ちゃんのお父さんがお盆の休暇を取っているから。
お母さんも休みを取ってくれた。
うちの親に言ったら、いつでも電話してこいと言った。
ありがとう、と礼を言っておいた。
翔ちゃんの運転する車で、世田谷に向かった。
この家に来るのは初めてだ。
閑静な住宅街のクリーム色の一軒家。
ドキドキしながら玄関に立った。
俺の家にきたときの翔ちゃんも、こんな気分だったんだろうか。
今更、どぎまぎしてた翔ちゃんの気持ちがわかって、また自分をぶん殴りたくなった。
あの時、手を握れば良かった。
そう思っていたら、翔ちゃんが俺の手を握った。
翔ちゃんの顔をみたら、微笑んでた。