第29章 ラズベリーscene4
どうやら同じ夢を見ていたらしい。
俺は絵を供えたこととか、このひと月お稲荷さんの傍で過ごしたこととか話した。
翔ちゃんは落ち込んでしまった。
俺に淋しい思いをさせてしまったと。
「翔ちゃん…気にしないの。しょうがないことなんだから…問題が問題だし」
「うん…」
「だからさ、これからは二人でお稲荷さんにお参りしようよ」
「うん」
にっこり翔ちゃんが笑った。
「でも商売繁盛なんだよね…お稲荷さんって…」
「何いってんの。家内安全の神様でもあるんだよ?」
「マジで!?」
「だから、毎日お参りしようね?」
「うん!」
神頼みも悪くない。
あんなふわふわの夢が見られるなら。
それに、俺達を仲直りさせてくれたの、お稲荷さんだし。
神様、ありがとう。
お狐様ありがとう。
お豆腐屋さんで揚げと朝食用の豆腐を買った。
そのままマンションまで戻って、森へ入った。
お豆腐屋さんで入れてくれたトレーごと、揚げを供えた。
暫く二人で手を合わせた。
また遠くで、ケーンという鳴き声が聴こえた。
目を上げると、翔ちゃんがこちらを見ていた。
「今、きつね鳴いてなかった?」