• テキストサイズ

カラフルⅠ【気象系BL小説】

第29章 ラズベリーscene4


家に帰ると、翔ちゃんはリビングで誰かと電話していた。


思わずそっと聞き耳を立てる。


「父さんが…?」


その単語だけ聞こえた。


お母さんだろうか。


そこから翔ちゃんの声は小さくなってしまって。


なにも聞こえなかった。





…神様…





電話が切れても、翔ちゃんはそこにずっと立っていた。


窓の外をじっと見て、何か考えているような背中だった。


一日中パジャマを着てるなんて珍しい。


普段はこんなことないのに。


俺はリビングのドアから入れなかった。


足がすくんでしまって。


どうして俺は翔ちゃんの力になれないんだろう。


悲しい。


俺、翔ちゃんの旦那さんなのに。





そんな毎日がしばらく続いた。


俺はずっと毎日、朝と夕方に翔ちゃんのマンションの隣にある森に行った。


時にはスケッチブックを持っていった。


翔ちゃんが押し黙って考え事をしていることが多くなったから。


邪魔しないようにスケッチに出かけた。


でもあんまり遠くに行く気にもならなくて、よくお稲荷さんの森にきた。


ごめんねと断ってから、お狐さんを描く。


もう何枚描いたかわからない。
/ 1124ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp